伝える言葉は連鎖していく
聞いたときにはそんなものかあ、と実感がなかったのに印象に残る言葉、
時が経って、不思議と自分の一部になっている言葉がある。
以前働いていた時に仕事を教えてくれた先輩が言っていた言葉が、私にとってのそんな言葉だ。
ーー俺は、仕事が出来ないのはやる側の問題じゃなくて、教える人の教え方が悪いと思ってる。
何かあったらフォローするから、良いと思うようにやってみろ。やってることは間違ってないから自信持て。
仕事を教えて出来ないのは、出来ない新人の責任じゃない、教える側の教え方が悪い。
今では、私もそう考えるようになった。
俺の伝え方が不十分だったな。
私が失敗しても、怒らずに気をつけるべき所を教えてくれたし、なにかを訊けば理解するまで確認してくれた。
私はいつも、周りの人に助けられてきたんだな、と当時のことを思い返す。
今、バイト先で、外国人留学生の子が働いている。仕事が忙しいのもあり、なかなか仕事を教える暇もなく、簡単な作業ばかりやってもらう状態になってしまっている。
隙をみて、やることを教えながら、思う。
私は、彼女がきちんと仕事をこなすことができるような教え方ができているだろうか。自分から見た景色だけで、彼女の仕事を判断してはいないだろうか。
新しい仕事を始める。
当然、初めのうちは大なり小なりミスが起きる。でも、よく観察してみると、基本ルールの伝え忘れや、こちらがフォローしきれなかった等、教える側の抜けが原因だったりする。
「新人だから仕方ない」
「新人がまたミス起こしたな」
そんな視点で見て、それで終わらせることもできる。
だけど、私はそれで終わらせるのは嫌だ。
初めから出来る人はいない。もしかしたら、何処かにいるのかもしれないが、私はまだ会ったことがない。
失敗しても受けとめてくれる人がいる場所で、自分で考えて動けること。
人を成長させるのは、付け焼き刃のノウハウではなくそのような環境で、それを作れるのは、一歩でも先に歩き始めた人なのだと思う。
私は誰かの作ってくれた環境で成長して、同時に誰かを導く要素のひとつとなる。
連鎖は続いていく。
自分が伝える、その一言によって。